センター試験の奇跡
受験なるもの、奇跡もクソもない。
結局は自分の今までのと努力の成果である。
実際私も、なんにも勉強しなかったから結局落ちて落ちて落ちて、唯一合格を出してくれた大学に通っている。
センター試験、私が受けたのはもう1年前となるのは感慨深いものがある。
見覚えのある同級生たちと見覚えのないバスに乗り込んで、近所の大学に受けに行った。
大学の前には高校の先生達がたくさん来ていて、なんだかみんな変なテンションで、お菓子を貰ってめちゃめちゃ応援された。
私もみんなと同じように制服を着ていたのに、何故かあまり喋ったことのない先生に、「なんかOLみたいな格好してんな!!」と言われた。「いつもと同様の制服です」と言って構内に入った。
友人とお喋りして試験時間まで過ごして、まるでいつもの模擬試験のようだったけど、確実に、みんなそれぞれちょっとテンションがおかしかった。
1日目はなんとなく終えて、2日目はまた同じバスに乗って行った。
文系で、理数を受けるのは少し人数が減ったけど、結局同級生たちとお喋りしていた。
2日目、化学基礎と生物基礎の試験でのことだった。この2科目で60分の試験である。
私は先に化学基礎から解いた。模試でもいつもそうしていたし、慣れてる方がいいと思った。でもすごく難しかった。解くのに大変な時間がかかってしまって、なのに時間が経ったことを全く意識していなかった。化学基礎をようやく解き終えたころにはもう生物基礎のために割く時間は10分しか残ってなかった。解けるわけがない。終わった、と思った。
もうすっかり諦めモードに入ってしまって、パッと見て解ける問題だけ解いて、その他7割くらいは六角形のリラックマの鉛筆を転がした。
コロコロと音がすると周りの子が嫌だろうから紙を持って、その上に乗せて転がした。どう考えても問題を解いてる人の風貌ではなかっただろう。
家に帰って、センター試験の速報が出た。どの教科もパッとしない結果で、終わってるなあ〜と思いながら鬱々と採点した。
そして生物基礎の答え合わせの頃になった。本当に見たくなかったけど仕方がないので答え合わせを始めた。でも、すぐにおかしいと気づいた。全部合っている。鉛筆を転がしたのにも関わらず。
結局1問しか間違ってなくて、50点満点中47点だった。割合的にはどの科目より生物基礎が良かった。
思わず赤ペンを置いて、筆箱の中からリラックマの鉛筆を取り出した。それぞれ六角形の先は私によって削られていて、1から6まで数字が書いてある。ピンクだったけど黒ずんでいて、当のリラックマも傷まみれだった。
そういえば私は高校受験の時もこの鉛筆を転がした。あの時の科目も理科だった。
リラックマの鉛筆。今もずっと私の筆箱に入れている。鉛筆を使うことはまずないけれど、ずっとずっと入れてある。
これからも「試験」と名のつくものを受けることがある。筆箱をしまって、いるものだけ出す、その時の私の机の上にはシャーペンと消しゴムと、リラックマの薄汚れた鉛筆が置かれる。