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カレン素数の日記

1000文字程度の文章をぼちぼち更新しています。暇つぶしの読み物にどうぞ

サイバーパンクについて

サイバーパンクとは1980年代後半から90年代初めにかけて流行ったSFのサブジャンルのことである。あくまでSF全体における、その中での傾向のことではあるが、特にサイバーパンク小説に関して書く。

 

82年頃に、SF界に「ファンタジー汚染論」が流れる。これはチャールズ・プラット、グレゴリイ・ベンフォードらが当時のSF界を憂い、批判的に展開したものである。

彼らは、70年代後半に流行っていたSF小説は見かけだけのSF、取ってつけたような「科学」でしかなく、実際には読者の願望充足のためのファンタジー小説サイエンス・フィクションではなく「サイエンス・ファンタジー」である、と批判した。

ちなみに、1977年にスターウォーズの第1作ep4が公開されている。スペースオペラの台頭、大衆のSFへの興味、人気が盛り上がったのは推測するまでもないだろう。

 

そうした時代に、サイバーパンクは生まれる。

これまでのSF界、先に挙げたサイエンス・ファンタジーへの反発から、超現実的な科学・人間の心理に重きを置いた作品が主で、退廃的であったり社会への反骨精神を顕にするような、つまり「パンク」なSFである。

サイバーパンクで舞台となるのはテクノロジーが過剰に発達した社会で、例えば人間の腕に機械が埋め込まれていたりだとか、電子空間だとか。

ちなみにサイバーパンクの中で更に分類することも可能で、蒸気機関が発達した社会を底においたのがスチームパンク、電子機器の発達であればエレクトリックパンクと呼ばれる。

 

初のサイバーパンク小説とされているのが、1984年に発刊された「ドクター・アダー」。作者のk.w.ジーターはかのフィリップ・K・ディックに影響を受けたとされている。

フィリップ・K・ディックの「電気羊はアンドロイドの夢を見るか」(1968)も電子空間世界の表現から、サイバーパンクの先駆け、起源とする声も多い。これの映画化「ブレードランナー」(1982)ではまさに、サイバーパンク的な退廃的近未来社会を描いている。

また、1984年にはウィリアム・ギブスンの「ニューロマンサー」が発売される。時代を変えた、SF界稀代の名作と言えよう。

 

また、この頃日本や中東を背景にしたSF小説が多く生まれる。ニューロマンサーの冒頭も千葉県が舞台だ。

エキゾチックさを売りにしたものだろうが、日本人である私が読むとちょっぴり不思議な気分になる。

 

ウィリアム・ギブスン、k.w.ジーター、またサイバーパンク的態度の創始者とされるジョン・シャーリー、あとはブルース・スターリングにパット・キャディガン、ルイス・シャイナー、トム・マドックス、この辺りがサイバーパンク軍団と言えるだろう。

ルイス・シャイナーはちょっと違うけどブルース・スターリングの友達で、かつ支持者であるのでサイバーパンク軍団として入れられることが多い。

あとパット・キャディガンはホラーなSFを書いていたが、サイバーパンク時代が終わると完全にホラーにシフトしていく。

 

さて、ここでサイバーパンク運動の流れを書いていく。

 

サイバーパンク軍団の1人であるブルーススターリングが、自身の雑誌「チープ・トルース」において他のサイバーパンク的でない作家・作品を批判したことで、SF界に大きな亀裂が生まれる。サイバーパンクか、そうじゃないかの分裂だ。

あとになって、SF評論家たちは彼のこの行動こそがSF界の成長の邪魔をしたと批判した。

実際、革命的に始まったサイバーパンク運動は結末としてはあっけなく、革命とは言えない。サイバーパンク運動の終わりは先に書いたように90年代初め。この頃には大衆に携帯電話やパソコンが普及し、サイバーパンクが近未来ではなく、現実的になりすぎてしまった。ここからサイバーパンクは後退していく。

(でも2020年現在、未だに当時のサイバーパンク小説に追いついてなくない?)


さて、現在「サイバーパンク」は存在するのか。
答えは、私個人としては、否。
サイバーパンクとはそもそも、80年代に定義されたものである。その定義を当てはめるならば今現在「サイバーパンク」を歌う作品はあくまでサイバーパンク「風」と言わざるを得ない。
サイバーパンクが廃れた理由も、結局はそのサブジャンルを分ける必要がなくなったということにあるため、まあ、分けなくていいんじゃない?というのが私の思いである。個人的なね。



話があっちに行ったりこっちに来たり、本当はもっとサイバーパンクの内容にも触れたいけどこのくらいにしよう。歴史的な面に関しては随時追記していく。多分。間違ってたらごめんなさい。私まだこの時代ぜーーーんぜん生まれてないんです。あと私はブルーススターリングが好き。