古本屋とエラゴン
私は随分、古本屋にお世話になっている。
なにより安くで買えるのが有難い。作者に一銭も入らないのがとても心苦しいが。
チェーン店に限らず、個人で細々とやってる古本屋も趣きがあってとても好きだ。
ただ個人でやってる古本屋の店主はかなりの高確率でド変態なので気をつけなければならない。ヤバい雑誌とか置いてたりする。エロいのならともかく、オカルト・宗教系を好んで取り扱う店はなかなか癖が強い。それに古本屋の店主というのはド変態でなくても変わり者であるのは確実だ。
前にONE PIECEの話の投稿でも書いたが、家から自転車を5分ほど走らせたところにチェーン店の古本屋があった。
あった。過去形である。
悲しいことに1年ほど前に潰れてしまった。本当に本当にショックだった。古本屋であれ、本屋というものが5分以内のところにあるというのはその街の教養平均をあげると思う。本屋がなくなるのはとても悲しいことだ。
その古本屋には思い出がたくさんある。小さな頃から本も漫画もたくさんたくさん買ったところだ。
「エラゴン」というアメリカの児童書をご存知だろうか。映画にもなっている。ドラゴンライダーシリーズの第1巻である。
辞書みたいな分厚さのデカい本だ。装丁が美しくて、思わず表紙を撫でたくなる。私はその古本屋で昔出会った。一目惚れだった。綺麗な青い瞳の大きなドラゴンがこちらを見つめ、うろこはキラキラと青く光る。買わなければ、と思った。10歳かそこらの歳だったから、5センチ以上もの厚さの本を買うには勇気がいった。値段を見ると500円。少し迷って、抱えてレジに持って行った。
妙にグロいシーンがたくさんあったが、英米児童書というのは全般そういうものである。
慣れない表現もあったが、あまりにストーリーが面白すぎた。ページをめくる手が止まらなかったし、止めたくなかった。美しくて強く大きいドラゴンが人と心を通わせ戦いあう、そんなファンタジーの世界にのめり込んだ。
本当に面白かった。あの時出会えていて本当に良かったと今は思う。あの頃より私は想像力を失った。今もたまに読み返すけれど、よくよく読むと翻訳が気になるし内容も不思議な部分が多い。調べてみたらなんと作者は19歳でこの話を書いていた。内容に多少の穴があっても仕方ない。それ以上に、この年齢でここまで書き上げたことは天才的である。
エラゴンには続きがあった。エルデスト、ブリジンガー、インヘリタンスの四部作である。ちなみにエルデスト以降3部は全て上下巻。つまり計7冊。どれも厚さは辞書並み。なんとも手を出しづらい作品だ。
それでもエラゴンは私を虜にして全て読ませた。古本屋に滅多に出なくて、でも定価だとかなりの値がするので買えなくて、母に頼んでクリスマスか誕生日かに買ってもらったりして全て揃えた。
残念ながら、最終部のインヘリタンスだけ装丁が違う。エラゴンはソニーマガジンズ出版、それがヴィレッジブックスになり、そこまでは良かったのだが、最後のインヘリタンスだけ静山社になって装丁も変更になってしまった。せっかくの美しいキラキラの鱗模様はなくなってしまった。
今も私の本棚に並んでいるが、背表紙もインヘリタンスだけ全く違っていてとても悲しくなる。静山社が悪い訳ではないけれど。
いつかエラゴンと同じようなスタイルでインヘリタンスが出版されることを夢見ている。絶対買う。
なくなってしまった近所の古本屋はチェーン店で、三店舗くらいあったと記憶しているがそれらが一斉に閉店した。なにかしらあったのだろう。閉店セール当時受験生だったが思わず駆け込んで、本を14冊購入した。割引が重なって、計2000円くらいだった。
私が読書狂になったのはその古本屋が大きく関係している。とてもたくさんの本に出会わせてくれたし、たくさんの世界があることを教えてくれた。